城戸ワイナリー
2005年 8月 20日

城戸ワイナリーのブドウ畑

城戸ワイナリーは、葡萄畑が広がる桔梗ヶ原の中にある小さなワイナリーだ。オーナーの城戸さんは、愛知県豊田市出身。山梨大学発酵生産学科に入ってからワインづくりに興味を持ち、大学院で研究を深めた後、五一ワインに就職。葡萄のおいしいところでワインづくりに携われることで、ワインに対する思いは一層深まったそうだ。実は城戸さん、葡萄農家を営む城戸家に養子として迎えられたそうで、自前の葡萄畑を持てたことが契機となり、1年半ほど前、五一ワインの社長に一念発起でワイナリーを始めたい思いを告げ独立。若きワイナリーオーナーとなったのだ。ワイナリーは葡萄作りから手がけなければワイナリーとは呼べないと城戸さんは語る。城戸家の畑では「メルロー」がその割合を多く占める中、桔梗ヶ原では栽培が難しい「カベルネ・ソーヴィニョン」という品種に挑戦している。この品種は、「メルロー」に比べ、完熟期が度遅く、11月初旬あたりが収穫日となる。そのため、寒さによる影響で今まで桔梗ヶ原では作られてこなかった品種だそうだ。世界的に見れば、「メルロー」、「カベルネ・ソーヴィニョン」、「ピノノワール」がワイン3大品種。また、城戸家の畑では棚式の他に、垣根づくりにも挑戦している。棚式と比べ、1本の木から採れる葡萄の数を少なくできるので、濃厚な葡萄を作ることができるそうだ。棚式に比べて樹勢を押さえなければならないので、手間がかかるが、ここから収穫された葡萄で作られるワインは楽しみだ。

障壁の存在

城戸ワイナリーのブドウ畑にて。
2004年7月7日(七夕)に、果実酒製造本免許が交付された。念願であるワインづくりには欠かせない免許が、偶然にも七夕にもたらされた。城戸さんの所にはワイナリーを始めたい思いを同じにする方達が訪ねてくるそうだ。ワイナリーを始めるにあたって一番の障害になることは何か訪ねてみた。その結果、土地との問題が一番大きな壁になるそうだ。製造免許申請には2段階あり、内免許の申請をし、事業計画を固める。葡萄の調達方法から販売計画、設備に関すること、土地に関することなど、製造の準備段階で必要になるものをここで計画し、申請する。内免許の取得が終了したら、醸造をするための機会の購入や、ワイナリーの建設に取りかかれる。この中でも葡萄の調達方法で、自前の畑を持っていることと、ワイナリーだけを作る場合とで苦労が全く違う。城戸さんは、自前の畑からの収穫ということが恵まれていた。葡萄作りから始めるワイナリーを目指す場合、農地の問題が一番障害になる。小規模なワイナリーが増えることで、塩尻のワインは様々なブランドが完成し、その数が増えることでワインといえば塩尻とまで言われるようになるだろう。しかし、ワイナリーを志す方のほとんどは土地を持っていない。まして、県外からiターンで起業を志した場合、この問題は大きな障壁となる。農地転用に関しても同様だ。仮に農地を貸してくれる土地主が現れても、そこにワイナリーを併設させてもらえる許可が下りるか否かだ。法律的な問題ではなく、土地主との問題でもある。最先端技術や、新しいビジネスモデルに挑戦するベンチャー起業とは違い、ワイナリーは歴史も古く、ワインが完成すれば販売できるルートもある確実な起業である。また小さなワイナリーでは、国内産の樽を使ったワインづくりには挑戦できないといった、実験的な醸造が資金面で難しい。現在は、フランス製の樽を使っているそうだ。樽の寿命は2回まで。その後、樽はワインづくりには使えない。ウィスキーを醸造する小さな醸造所があれば、樽を譲っても良いとのこと。ワインとウィスキーは近い存在かもしれない。松本市あたりにウィスキーの醸造所があっても不思議ではない気がする。水郷松本の名は伊達ではない。こうした小さなワイナリーを支援する動きが行政サイドからあっても不思議ではないような気がする。ワイン業界だけに止まらず、塩尻市を活性化する大きな利益を生む源泉になり得るのではないだろうか。城戸さん曰く、自分と同じ仲間が増えるのは嬉しいことだと話している。

ワインに関する間違ったイメージ

ワイン倉庫
ワイナリーと聞いて何を想像するだろうか? 少なくともツタで覆われたワイン倉のイメージは思い浮かばないだろうか。建物がツタで覆われているのは、倉の中の温度上昇を防ぐためでもある。そう聞くと、ワイン醸造には温度管理が重要になってくるのかと思いこんでしまう。確かに、ワインセラーは半地下や地下で、10度以上にならないことが望ましかったりと話に聞くことがある。温度は一定が望ましいらしいが、あくまでも大量に均一の製品を作るための措置であり、ワイン醸造に関しては絶対の条件ではないそうである。言われてみれば、ヨーロッパでも昔はクーラーなんか無かったはずだ。実は塩尻という土地、真夏の暑いときはわずか数週間で、あとは昼夜の温度差を見ると涼しい土地柄なのだ。山梨に比べ、気温はワインづくりに向いている。そのため、城戸ワイナリーは最低限の温度管理設備しかない。具体的には、天井を張ったことと、屋根裏の熱気を排気する換気扇だけだ。あとは、外の気温に任せるような形になる。こうした自然に任せたワインづくりはまさに従来の徹底した品質管理とは違う、環境負荷の少ない製法ではないだろうか。

ワイン詰め機

また、城戸ワイナリーの醸造機械類はほぼ、中古である。少ない人数でも作業ができるように、ラインは組んでいない。醸造場所の一角でビン詰め作業をする予定だそうだ。ラベル貼りも1本1本手張りをする。まさに手作りである。そうした工程の中、最近の流行で酸化防止剤を入れない無添加ワインが売れているそうだが、醸造工程でこの酸化防止剤を入れないということは、醸造中に雑菌の繁殖を許してしまい、醸造樽の表層に「産膜」と呼ばれる膜ができ、ワインの品質を落としてしまうそうだ。ワインの酸化防止剤とは、亜硫酸塩。ワインが作られるようになってから現在まで長く使われてきたものであり、硫黄を燃やすことで産まれる成分である。これまで数百年間も使われ続けた亜硫酸塩。悪影響の報告は一件もなく、またワインを栓抜きし、グラスに注ぐことで大抵は気化してしまうものであるので、無添加が体によいとは言い切れないのである。むしろ、酸化防止剤といわれるように、ワインの酸化を防ぎ、何十年、何百年と味をまろやかに変えていくのはこの亜硫酸塩のおかげだ。腐敗菌の繁殖を防ぐ効果があるため、ワインを安全に飲むためにはむしろ入っていた方が良いのである。イメージだけでワインを選んではいけない典型的な例である。もちろん、城戸ワイナリーのワインは、亜硫酸塩を微量に入れて醸造を行っているため、酵母菌を助け、腐敗菌などの繁殖を抑える役目を果たすので、おいしいワインができるのだそうだ。

城戸ワイナリーデータ

ワイン畑のおまじない

株式会社Kidoワイナリー:〒399-6461 長野県塩尻市宗賀床尾1530-1

ホームページ:http://www.shiojiri.ne.jp/~kidoaki/

醸造責任者:城戸亜紀人

ワイナリーの場所:国道19号線を塩尻から木曽方面へ。中山道一理塚交差点を左折すぐ右手。

自分の思うワインしか作りませんという城戸さんのワイナリーは、年間20t〜22tのワイン生産量。本数にして約2万本。原料の葡萄は約3分の2を自分の畑で栽培し、残りの3分の1を契約農家に栽培してもらっている。年間700t以上のワインを製造する大手から見たら、小さなワイナリーだ。だからこそ、自分の目の届く範囲でワインづくりが徹底できる。2004年11月にオープンする時には、約1万5千本のワインができあがっている。価格は1本1,300円〜。

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